官足法の便利帖
自律神経と脳下垂体の物語
私たちの身体を、神様のつくったロボットに例えます。
燃料は血液です。
特に血液中の酸素と栄養がエンジンを動かしています。
酸素はとにかくたくさん使うので蓄えている暇はありません。
それこそ数秒に一回肺で取り込んでいます。
死ぬまで一生続けます。
それを止めたら数分で故障。再起不能になります。
そうしてそんなにたくさんの酸素が必要なのかというと、人間ロボットは60兆個もの部品でできているからです。その部品は酸素を常に補給していないとスグに錆びて動かなくなります。
だから、大変多くの酸素が24時間必要なんですね。
60兆個の部品はいくつかのグループに分かれてそれぞれ別の仕事をしています。
数万個が集まって2個の腎臓というパーツができています。
腎臓というパーツは、それこそ純度の高い血液が全身に回りやすくするために、不要なゴミを取ったり、害のありそうな成分を中和したりしています。
車だって、綺麗なガソリンを使わないで、その辺のどぶの水を混ぜて使えばすぐ動かなくなってしまったり、故障の原因になります。
それと同じことが人間ロボットにも起こります。
だから、一つではなく、予備に2つあるのです。
酸素を肺に取り込む穴(鼻の穴)も二つありますね。
大体、大事なものは予備も含めて二つあるものが多いのです。
車のエンジンがかからなくなることがあります。
ガソリンに点火するところの管に、古いガソリンなどが詰まって火花が飛ばなくなるからです。
定期点検してまめにお掃除していればそうはなりません。
人間ロボットが立っていることが多いので、足の裏の部分がべったり地面に当たっていたり、表面が磨り減らないように「靴」なるオプションをはめて足裏表面を保護する代りに、圧迫をかけています。
少し押しつぶされたかたちになった人間ロボットの足には、血液という燃料が通りにくくなって、古い燃料が少しずつ溜まるようになります。
これは車の点火口が詰まるのと同じようなものです。
そいうすると「腎臓」というパーツに燃料が届きにくくなって、故障気味になります。
そこで更に悪いことに、燃料オイル(血液)は汚れていても放置されるようになります。
こうして人間ロボットは外からは見えないところ(体の内部)でどんどんさびついてゆき、ある時からちゃんと機能しなくなります。
100年は使えるように出来ているのに30年くらいで故障、修理も不能になって廃棄処分になる人間ロボットもいます。
人間ロボットは誰が操縦しているのでしょう。
それは神様の部下で、魂といわれるようなものが、1日の半分以上は自分で操縦しています。
夜になると「自動操縦」に切り替えて、魂は眠りに入ります。
そこでは大工場のように少ない管理職と多くのパートさんが働いています。
「自動操縦」工場のシステムは、とても複雑に精巧に作られていますので、人間ロボットが寿命を終えるまで、ちゃんと整備していれば機能がおかしくなることはありません。
でも大体は手入れを怠り、燃料オイルに余計なものを混ぜたりして、それが「魂」という人の悪いところです。それも知らず知らずにやっていることさえあります。
日中も「自動操縦」は活躍しています。
「心臓をどきどきさせる」「肺に取り入れた酸素を吸収する」「栄養の元(食物)を分解し、消化し、分別し、要らないものは排出させる」「破損したところを自動修理する」「子供を作る準備をする(排卵と生理)」などなど、それこそ手に余るほどたくさんの仕事をしてくれます。
この器官の名称は「脳下垂体」と言います。
その上司が「視床下部」という器官です。
位置も脳下垂体の真上にあります。
脳下垂体は心臓や腸や子宮を直接動かしている訳ではありません。
「自律神経」という実動部隊がいて、彼らに命令をする係り、詰まり自律神経の上司、課長にあたるような存在です。自律神経部隊はそれぞれ担当の仕事があり、心臓係、消化器係、腎臓係、子宮係、脾臓係など大勢の担当がそれぞれにいます。
誰よりたくさんの仕事をしていますから息つぐ暇もないほどです。
だから、他よりも多くの燃料オイルがないとやっていけません。
さて、この「脳下垂体」課長にとって、お気に入りの部下とそうでない部下がいます。
特に出来の悪い部下には冷たく当たることがあります。
それでも機嫌が良い時ならば、一応分け隔てなく、部下の仕事をチェックして適切な指示を与えています。
例えば生理の周期は誰が決めていますか?
月との関係ですか?
違います。それも脳下垂体課長の仕事です。
もし毎月ちゃんと生理がきて、周期を守っているなら、課長は子宮担当のことを気に入っているはずです。
子宮担当も真面目で優秀なんでしょう。
ある時から課長が必要な燃料オイルが足りなくなってきました。
足の裏でトラブルがあって、オイルの配送が滞るようになったせいです。
加えて、腎臓も体調不良となって、オイルの味がまずくなってしまいました。
その頃から脳下垂体課長の機嫌が悪くなってしまいました。
特に大きな仕事が重なってしまうと、どうしても余り好きでない部下の仕事を見なくなります。
あるケースでは例えば脳下垂体課長はどうやら「胃腸担当」の部下のことが嫌いのようです。
だから、子宮担当を支援している月の半分くらいは「胃腸担当」に手抜きの指示をしてしまいます。
元々、それほど優秀でない胃腸担当は、すっかりおろおろして、失敗ばかりします。
それが過敏性腸症候群だとか、胃潰瘍だとか、食欲不振、吐き気など多くの不具合をもたらします。
「燃料オイル」は血液です。
その中にある「酸素」は脳下垂体が誰よりも必要なものです。
仕事が重なった時はいつもより更に多くの酸素が必要です。
いっぱい働いたらお腹がすくのです。
なのに、血液が届かない、そして血液が汚れている。
だから酸素も足りないし、飲みにくい。
なぜなら血液ゴミが混じって、それを避けながら飲もうとしますから。
もしジュースに髪の毛が浮いていたら、それを避けて飲むでしょう?
あるいは飲まないでお店の人に交換を要求するかもしれませんね。
でも脳下垂体さんにはそれはできないのです。
機嫌の悪い脳下垂体課長には、いざとなれば好きな部下を可愛がり、嫌いな部下は切り捨てる。
いかにも、人間社会にもありそうな話ですが、酸素という大好物をいつもたっぷりとあげていれば、そんなこともなかったのです。